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 駄目な会社とは

順調に見える会社は、工場の敷地が大きくなり、営業所も増え、従業員も増えていく。しかし、不況の風が吹いてくると、突如として倒産に追い込まれたり、債務免除をしてもらったり、減資をしたり、大規模なリストラをしたりする会社は少なくない。一つの原因は、甘い需要予測に基づいた安易な融資を受け入れである。その他の原因としては、現実に即さない減価償却期間が設定されていることである。さらには、将来売れない商品在庫をどんどん抱えてしまうことである。

以上挙げたような原因のために、会社がダウンサイジングしなくてはならないならば、その会社の経営者・管理者は責任を取るべきである。しかし、日本の会社は責任の所在が曖昧であり、上層部が十分な責任を取らないにもかかわらず、罪の無い従業員が被害を被ることが少なくない。では、何故、急に会社の懐事情が悪くなり、倒産寸前前追い込まれたり、大規模なリストラが行われたりするのだろうか? (←ここでは、これを駄目会社の定義とする)

これには、見かけ上の(不安定な)資産・利益しか見えないバランスシートと損益計算書、それを真なる意味で理解できない経営者、見かけ上の利益で一喜一憂する株主が関係している。

具体的な話をする前に、優秀だと思われていた会社が実は駄目な会社だった例を示しておこう。

この記事を書くに当たって最近有名なのは日本コーリンだろう。日本コーリンを知っていた人は、この会社の倒産の話を聞いたときに信じられないと思った人が多いのではないだろうか。四季報などの財務情報を見る限り直ぐに倒産するとは思えない無いようだったからだ。在庫の再評価をした瞬間に債務超過の状態に陥り、銀行からの資金繰りが難しいので法的な手段により再生する道を選択した。

新潟鐵工所も同様では無いだろうか。工作機械においてはかなりの知名度があったにも関わらず、最後は資金繰りが上手くいかなくなり、倒産してしまった。

以上あげた二つの会社は知名度、技術力等優れており駄目会社だとは誰も思わなかったはずだ。しかし、そんな会社が倒産してしまうのである。実は、倒産していないけど倒産しないとおかしい会社は上場企業でもたくさんある。もちろん、名門と思われている企業も同等である。

駄目会社の一生は共通しているのだ。大概は、在庫や所有不動産の評価損を計上し、その時点で財務が著しく悪くなるのだ。これによって、債務超過になれば一発で倒産に追い込まれる事があるが、債務超過にならない場合は財務が劣悪のまま事業が継続し、劣悪な財務によって資金繰りがショートしていく。簡単にそのプロセスを書くと以下のようになる。

  1. 創業から成長段階の手前までは、優良会社も駄目会社も同じである。
  2. 会社の製品やサービスが時代の流れに乗ると、急激に売り上げが伸び始める。会社はこの時点で需要増に対応するため、巨額の設備投資をしていく。それと同時に、大量に人を雇い始める。
  3. 設備投資によって供給量が大きくなると、売り上げが飛躍的に伸び、バランスシート上で増収傾向となるため増配をしたり、株式分割をし始める。
  4. しかし、同業他社も供給量を増やし始めるため、売り上げの伸びがあるにも関わらず、利益が薄くなってくる。
  5. ブランドを確立していない場合は、安売り競争に巻き込まれる。さらに、工場の生産キャパシティーがありあまっているために、製品在庫が積み増しされていく。
  6. 製品原価を低くするために、工場を人件費の安い地域に建てたりし始める。同業他社も同様の行動をとる。
  7. 売り上げが伸びなくなり、利益が減少もしくは赤字体質になる。この時点で、リストラを始める。大概は希望退職を募る。
  8. 製品在庫を再評価してみると、巨額の棚卸評価損を計上しないといけなくなる。不動産関連を豊富に持っている場合は、土地評価損が起きる。
  9. 巨額の設備投資を融資によって賄っていた場合は、債務超過になったり、財務状態が非常に悪くなる。
  10. バランスシートで判断している銀行から、遅かれ早かれ見放される。これにより倒産が確定する。運が良い場合は、減資および銀行に債務免除をしてもらい、新たな大株主の傘下で事業が継続する。

駄目な会社が決定的にやってはならないことをした時点というのは、「需要のピークに合わせた設備投資をした時点」と「増設した設備が生み出す製品の在庫を莫大にした時点」である。

需要のピークに合わせた設備投資により駄目会社が生まれた分野の例としては、携帯電話やパソコンである。これらの耐久消費財は普及率がある一定水準になるまで急速に普及率が上がるのだが、ある時点で普及率が一定になる。普及率が上がる時は製品が急速に売れるので、設備投資をして供給力を増したいと考えるのが普通なのだが、普及率が一定になると急速に需要が弱まる事を考慮しなければならない。私が今の時点で今後同様の事が起きるのではないかと危惧している製品分野は、デジタルカメラである。

増設した設備が生み出す製品在庫により資金がショートしていく分野の例としては、一部のビデオレコーダやオーディオ機器などである。ケンウッドが棚卸評価損をして資金援助をしてもらった事は記憶に新しい。設備を増強すると製品の作るスピードが早いので、在庫が増えやすいのだ。設備投資をした際には、流通在庫等の管理を同時に厳しくやっていかないと、このような資金ショートがおきやすい。

よって、需要増に合わせて設備投資をする場合には、常に需要が減退した時の対応を取れるようにしなければならない。また、設備投資を増強したことによって増えた利益は、配当などで流出させるのではなくて、借り入れの返済や会社の余裕資金に回すべきである。一方で、設備投資により生産力を増強した際には、在庫管理に投資を惜しむべきではない。資本回収期間を短くする努力を常に怠ってはいけない。


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